『完璧帰趙』という言葉を聞いたことはありますか?
その響きから「完璧さ」だけを思い浮かべる方も多いと思いますが、実は古代中国の心温まる物語が由来になっています。
本記事では、『完璧帰趙』の本当の意味や読み方、そして鍵となる『和氏の璧』との関係を、わかりやすくご紹介します。
『完璧帰趙』の読み方と意味
完璧帰趙は、【かんぺき きちょう】と読みます。
預かった大切なものを傷ひとつ付けずに返すこと。
『完璧帰趙』は「璧を完うして趙に帰る」とも読み、「完璧」という言葉の語源とされています。
*『璧』とは:
中国の玉器の一種。円板状の玉の中央に小さな孔があいているものをさす。儀礼・祭祀用の器として殷〜漢代に用いられた。
『完璧帰趙』の由来とは?
『完璧帰趙』は、*史記の『廉頗・*藺相如列伝』にあります。
*『史記』:
中国前漢の武帝の時代に司馬遷によって編纂された歴史書。二十四史のひとつ。事実を年代順に書き並べる編年体と違い、紀伝体(各人物の事跡を中心に記述する歴史の書き方)で編纂されている。伝説上の人物・黄帝から前漢の武帝までが記されている。
*『藺相如』:
戦国時代の末期、趙の国・恵文王の家臣。「完璧」や「刎頸の交わり」の故事で知られる。
『完璧帰趙』のあらすじ
中国の戦国時代、絶対的な力を持っていた秦の昭王が、「和氏の璧」という宝石を持っていた趙の恵文王に、十五の城塞都市と交換するよう要求します。
要求を呑まなければ秦の怒りを買い、侵略の口実を与えることになります。要求を呑んだとしても、本当に秦が都市を与えるかは疑わしいところです。
どうしたらよいか議論していると、ある家臣が「藺相如という切れ者がいる」と恵文王に進言します。
藺相如は和氏の璧を届けに向かいましたが、昭王には交換する意思がなく奪うつもりだと気づきます。一度は和氏の璧を献上しますが、藺相如は上手く言いくるめて取り返し、無事、趙の国に持ち帰りました。
出典:『史記 藺相如伝』(※十八史略の『完璧』とは異なる)
この故事から、『完璧』は、壊すことなく元の姿のまま持ち主に返すこと(元のままの璧が趙に帰る)という、「完全でまったく欠点のないこと」の意味を表すようになりました。
『完璧帰趙』まとめ
『完璧帰趙』は、ただの「完全さ」を表す言葉ではなく、誠実さと信義を貫いた物語から生まれた深い意味を持っています。
『和氏の璧』に込められた忠義の精神を知ることで、言葉の背景にある人の思いや心の豊かさを感じることができますよね。
古い故事から学べることは、変わらず大切にしたいものです。