君、花海棠の紅にあらず|第21話・22話・23話・24話のあらすじ

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『君、花海棠の紅にあらず』のあらすじ第21話~第24話(全49話)

こちらの記事では第21話~第24話までのあらすじとネタバレをまとめています。ネタバレを見るには をタップしてください😃

今回から新たに登場する人物

原小荻ユエンシャオディー:名優
兪青ユーチン:原小荻の弟子
四喜児スーシーアル:雲喜班の座長
小周子シャオチョウズ:四喜児の弟子

第21話 女役の不在

梨園の人気投票が迫る中、新演目の妃役が決まらず、商細蕊は頭を悩ませていた。そんな折、役者·原小荻の引退による送別会が開かれ、商細蕊は程鳳台らと共に参加することに。その席には厄介な役者·四喜児や彼に虐げられている弟子·小周子も訪れていた。四喜児の態度に憤る商細蕊だが、原小荻を師と仰ぐ女性·兪青の歌声を聴き…。

商細蕊と杜洛城が曲に手直しをしている。程鳳台は、商座長が描いた工尺譜こうせきふという中国の五線譜に興味を示す。細蕊は座員の演技を見ても、妃役にふさわしい者は見つからない。杜洛城は謝礼金を積んでよそから名優を借りようと提案するが、梨園一の役者を選ぶのは来月に迫っており、協力を得るのは難しい。そこへ鈕白分が知らせを持ってくる。原小荻先生が引退することになり、送別会が開かれるという。原先生を好かない杜洛城は欠席の意を示すが、細蕊は実に惜しいと嘆く。一緒に舞台に立つのを夢見ていた細蕊は、侯玉魁の引退の次に原先生の引退が残念だと惜しむ。

鳳台が家へ戻ると、范湘児が察察児を慰めていた。兄は来鴻を巻き込まないと言ったのに、人質にして鄭会長を逮捕させたとまだ怒ってる。鳳台は、武器を持った人間に取り囲まれて命を落とすところだったと釈明し、嘘をついたことを謝る。上海にいた頃とは別人だと察察児に責められ、家族を守るには必要なことだと諭すが、まだ幼い察察児には伝わらない。

原先生の送別会の日。細蕊が談笑している様子を遠くから見守る鳳台。雲喜班の四喜児が到着すると、変わり者が来たと范漣が耳打ちする。皆よそよそしい態度で、声をかけられた細蕊も四喜児を無視する。気を悪くした四喜児は、商先生は曹司令官と南京高官の後ろ盾を得たから、気を付けないと兵が乗り込んでくると悪態をつく。そして、兪青に皮肉を言う。兪青は以前、趙将軍の後妻の座を断り、噂になった人物だ。しかし兪青は動じることなく、四喜児は嫉妬心が強いと諫める。みんなに笑われた四喜児は弟子の小周子に八つ当たりする。

主役の原小荻が来場する。客たちに挨拶をし、兪青を見つけると、2人はしばし見つめあう。宴が始まり挨拶を終えた原先生はすぐさま兪青のもとへ向かうが、商細蕊が遮って原先生に声をかける。原先生は細蕊の「牡丹亭」を聴いた感想とアドバイスを伝え、細蕊は敬意を表して杯を捧げる。

四喜児が主役の原先生に一幕頼む。賛成の拍手が起こり、原先生が承諾する。細蕊との会話を聞いていた四喜児は、細蕊と「牡丹亭」の「驚夢」をリクエストするが、細蕊は酒を一気飲みし、酔ったから歌えないと拒否する。雲喜班の座員が喜先生に共演を頼むと、四喜児は兪先生こそ相手にふさわしいと声高に言う。兪青は四喜児が自分を困らせたいのを承知の上で、原先生に一緒に演じようと願い出る。

酔いをさましに会場を出た商細蕊と程鳳台。原先生と兪先生の掛け合いが聴こえてくると、細蕊は魂を持っていかれたように立ち上がる。「潜龍記」は兪青にお願いしようと決める。

舞台上では原夫人が兪青を罵っていた。送別会に姿を現した兪青が気に入らないのだ。原先生が場を収めようとしないので細蕊が助けに入る。新演目の相談のために兪先生を招いたと弁解し、兪先生と共演させた四喜児を咎める。事態が収束しないので、鈕白分が商先生と兪先生の共演を提案する。主役の原先生が承諾したので、2人は演目を相談し「十三妹」を歌う。

披露した後、言葉を交わす商細蕊と兪青。細蕊は四喜児に腹が立ったから仲裁に入ったが、新演目の話は本気だと伝える。演技の出来は筋書き次第と言う兪青に、「潜龍記」は間違いなく名作だと熱弁する。内容を聞き、確かに傑作だと判断した兪青は引き受けることにする。

帰りの車の中で鳳台は、師弟の共演は珍しくないのに原夫人が怒った理由が分からないと不思議がる。細蕊が兪青と原小荻の関係を教える。兪青は原先生を追いかけて役者になり、家族とも絶縁状態に。その後原先生は妻を娶り、兪先生は側室になるのを拒んだ。今の関係は分からないという細蕊だが、鳳台は原先生にはまだ未練があると見抜く。

新演目は絶対に成功させたいところだが、六月紅が抜けて使える女役がいなくなった水雲楼にはまだ問題が残っていた。もう一人の女役が見つかっていない。それを聞いた范漣は、見込みのある子がいると小周子を推薦する。耳が肥えてる范漣は、その子は澄んだ声で見た目もいいと評価する。無名なのは、師の四喜児が若くてきれいな弟子に嫉妬し、舞台に上げないからだった。

小周子に興味を持った商細蕊は、雲喜班へこっそり足を運ぶ。水仕事をしながら歌う小周子に、「惜しい」と細蕊が声をかける。細蕊に気づいた小周子は嬉しそうだが、惜しいというのは下手だということかと質問する。音調は四喜児に似ているが技が未熟だと、細蕊がお手本を見せる。四喜児に見つかるのを恐れた見張り人が慌てて歌を止めさせる。帰ろうとする細蕊を小周子は引き留め、身請けしてほしいと懇願する。細蕊は機会があれば抜け出して来るよう伝えるが、小周子を雲喜班に置くのは惜しいと思った鳳台は手を打つことにする。

第22話 己と戦え

程鳳台と曹貴修の武器密輸を嗅ぎつけた劉漢雲は、部隊を従えて南京から視察にやってくる。劉漢雲の部隊は道中で絡子嶺の匪賊を攻撃し、古大犁の仲間が犠牲になる。一方、程鳳台は四喜児の一座から小周子を引き抜くために策を巡らせる。その策が成功し、1か月という期限つきではあるものの、小周子は商細蕊の一座に加わることに。

小周子に芸を教えると約束した商座長。商細蕊のお眼鏡にかなう役者は珍しいので、程鳳台は何とか小周子を引き込みたいが、四喜児は小周子の自立を阻んでいるうえ、細蕊とも犬猿の仲だ。程鳳台は策を巡らす。

その頃、絡子嶺では、グーダーリーと日本兵の銃撃戦が繰り広げられていた。今回はただの軍隊ではないと見たグー親分は、平民の服を着て逃げることにする。グー親分のお腹には子供が宿っていた。

曹師団長に報告が入る。南京から劉漢雲を指揮官とした独立部隊が視察に来るという。200名も従えた部隊は絡子嶺の匪賊も排除していると聞き、曹師団長は落ち着かない。そこへ検問をくぐり抜けたグー親分が乗り込んでくる。

雲喜班では、四喜児が小周子の稽古についていた。節回しが不快だと小周子を折檻しようとするが、賓客がきたので稽古を切り上げる。舞台に上げる気はないと小周子に伝え、いつもの雑用をさせる。

范漣が四喜児の知らせを持ってきた。雲喜班に役者をくれるよう使いを送ったら、優秀な子は裏に隠し、だめな子ばかり勧めてきたという。商座長が小周子を欲しがっていると知れば四喜児は黙っていない。とりあえず梨園とは縁のない者の力を借りて小周子を連れ出すことにする。そこへ曹師団長がグー親分とやってくる。身ごもったグー親分に住まいの依頼に来たのだ。4か月が過ぎ、軍営には置けなくなっていた。鳳台は住まいを用意すると承諾し、グー親分にある頼み事をする。

豪商の夫人と偽ったグー親分が四喜児を訪ね、役者を家に置きたいと切り出す。一座の粒を揃えたと四喜児は胸を張るが、ぱっとしない者ばかり。小周子を呼ぶよう言いつける。渋る四喜児に大金をちらつかせる。小周子に1か月来るよう依頼すると、売らないでくれと座長にすがりつく。しかし四喜児の承諾を得ているので、嫌がる小周子を気絶させて強引に連れ出す。

第一楼の門前に置いて行かれた小周子が恐々と中へ入ると、歌う商座長の姿があった。”家にいれば継母に殴打され 耐えきれません”と歌っている。小周子の芸は秀でているが、もう一層上に行かないかと誘いかける。緊張が解けたのか小周子が倒れこむ。

空腹だった小周子の食いっぷりを見て、商座長に似ていると程鳳台がからかう。太った役者は好かれないからと何日も飯抜きにされており、肉を食べるのは数年ぶりだという。小周子に大金をはたいた細蕊は、初舞台ですぐ注目されると期待し、小周子の名では格好が悪いと芸名を考え、「周香蕓」と命名する。

座員たちの所へ小周子を案内すると、四喜児の弟子が何しに来たと絡んでくる。小周子を守るよう頼まれている小来が間に入り、座長が引き抜いたと教える。寝床を作らせたいのだが、座員たちは抵抗する。修練用の長椅子で寝ている小周子は、屋内で寝られるだけで幸せだと慎み深いことを言う。臘月紅が黙って隣に布団を引いてくれるが、眠りについた頃、座員たちに布団ごと外に追い出されてしまう。

何事だと商座長が出てくる。誰の仕業か暗くて見えなかったと臆する小周子。商座長が寝たふりをする座員たちを起こす。なぜ雲喜班から来たよそ者の肩をもつと尋ねる座員に、小周子の芸はお前たちより優れていると言い放つ。納得がいかない様子の座員たちを見て、小周子と一騎打ちさせることにする。勝ったら月給と同額の金をやると提案。小周子は怖気づくが、ここで引いては役者になれないと檄を飛ばし、商座長の部屋で寝させる。

商先生に言いたいことを切り出せない小周子。四喜児のせいで肝が小さくなっている。明日の勝負が不安でたまらないと心配する小周子に、深く考えず落ち着いてやるよう助言する。商座長のような優しい人に初めて会った小周子は、必ず恩返しをすると誓う。

翌日、勝負を目前に、座員たちは臘月紅に対戦するよう頼んでいた。男役では臘月紅が一番優秀なのだ。大勢の前で演じるのは初めてだと言う小周子に、劇場には客が何百人もいると商座長が奮い立たせる。歌い出したが、緊張で上手くできない。座員たちから下手だと馬鹿にされてしまう。やり直してみたが、歌詞をど忘れしてしまう。臘月紅からは、もう少しできると思っていたのに、まるで素人だとがっかりされてしまう。言いすぎだと小来が仲裁に入るが、小周子の実力はこの程度じゃないと商座長は分かっている。勝負の結果を座員たちが聞きたがるが、程鳳台が来たので、結果発表は後回しになる。

商細蕊は小周子が実力を発揮できず苛立っていた。座員たちが見ているのは実力で、ひいきで勝ったら痛い目に合うのが目に見えている。昔は商細蕊も己と戦っていた。舞台で失敗するのが怖くて、緊張で足が震え、舌も回らなかった。そんなある日、義父に丸裸にされて家へ帰されたという。一度大きく恥をかいたことで、何も恐れなくなったというのだ。この話を聞いた鳳台は、細蕊が荒治療をさせないかと心配になる。

商座長が勝敗の結果を発表する。臘月紅が勝ち、一人残らず月給と同額の金を渡すと言い渡す。喜ぶ座員たちを残し、小周子を食事へ連れ出す。恥をかかせて損もさせたのに、怒らない商座長の暖かさに、小周子は再び感激する。

第23話 運命共同体

商細蕊に連れられ街で食事をしていた小周子は、1人で店に置き去りにされてしまう。代金を払うように迫られるがお金はなく、店主に言われるまま路上で芸を売ることに。緊張する小周子だったが、街の人々の前で歌ううちに度胸がついていく。一方、曹貴修は北平に到着した劉漢雲を出迎えるが、顔を見ることすら許されない。

商細蕊は、友人が近くに来てると小周子を残して店を出ていく。一人残った小周子は、商座長の帰りを待ち、いつしか眠りにつく。店主が会計を済ませるよう催促に来るが、小周子は持ち合わせがない。商先生と一緒に来たと言っても、店主は信用しない。役者なら路上で芸を売れと店主が路上へ追い出す。しかし気弱な小周子は声が出ない。

兵が警備する中、曹師団長が劉漢雲の到着を待っている。沿道にグーダーリーの姿を見つけた曹師団長は、敵討ちを企んでいると察知し、すぐさま連れてくるよう命じる。曹師団長は連行されたグーダーリーの銃を取り上げ、子がお腹にいるのに無茶をするなと忠告する。子の父親である曹師団長は、捕らえたグーダーリーの仲間を助けると買って出る。

路上で声掛けをする小周子が、やっと一人の男を呼び止める。一曲歌い始めるとすぐに人が集まり、みんな小周子の歌を褒める。別の曲をリクエストされ、これも絶賛される。小周子は金銭だけでなく大きな収穫を得る。

劉漢雲の車が到着し、歓迎の意を表する曹師団長。しかし車から出てこないので、車を降りるよう呼びかけると、秘書が出てきて委員からの伝言を伝える。特命があり時間に余裕がない劉漢雲は無意味な行事を省きたいという。曹師団長は、劉漢雲にお目にかかりたいと車へ近づく。ドアが開くと、刀が目に入る。もうひとつ伝言が伝えられる。視察は秘密裏に進めているので、邪魔をするものは蒋委員長の刀で殺すという。曹師団長は、どんなことでも協力すると答える。

街では群衆が小周子を称賛し、声援を送っている。そこへ会長の息子・姜登宝が現れ、四喜児の門下がここで何をしていると言い掛かりをつけてくる。”芸で借金を返済する”と書かれた前掛けを見て、金を渡し「大鬧銷金帳」をリクエストする。「できません」と言う小周子に、アザの数が足りないようだと暴行を加える。座長が止めに入る。どんな境遇であろうと己の尊厳は守らなければならないと、断った小周子を褒める。細蕊は姜登宝の手下たちを武術で懲らしめる。登宝は捨て台詞を吐き、退散する。小周子は、また迷惑をかけてしまったと謝るが、商座長がわざと置き去りにした理由を理解し、その心遣いに感謝する。細蕊は、小周子の衣装を作りに行こうと誘う。

北平市政府に劉漢雲の姿があった。北平は武器密輸の中継地点で、武器商人に正規軍が関与している。劉漢雲は蒋委員長からの特命で、その事実を調べに来ていた。北平の治安は、街中はまだ平穏を保っているが、外では匪賊が暴れており、道中にも山賊がいて、劉漢雲も危険な目にあっていた。兵が匪賊の砦を破壊させ、何名か生け捕りにした。劉漢雲はほかの匪賊への見せしめにさせるため、法廷で裁く準備をするよう役人に指示する。

劉漢雲が動き出し、倉庫を全部抑えられた程鳳台は曹師団長を訪ねる。隠し倉庫が見つけられてしまう前に何とか武器を運び出したい鳳台だが、曹司令官に頼みたくても木村医師が付きっ切りで、司令官に合わせてくれない。鳳台が捕まれば隠し倉庫の荷が証拠になり、必ず曹家にも捜査の手が及ぶことになる。お手上げの鳳台はもはや師団長を頼りにするしかない。

療養中の曹司令官に面会する曹師団長。木村医師を遠ざけるため、風呂に誘う。木村医師は曹親子の会話に聞き耳を立てる。曹貴修は説得を試みるが、激昂した曹司令官は、お前が我が人生の唯一の汚点だと声を荒げる。殴られた曹貴修は出ていく。

大奥様に新演目の券を渡しに来た商座長。義父の劉漢雲が大奥様に薬を飲ませているのを見て驚く。大奥様と知り合いだと知らなかった細蕊は、なぜここにいるのかと尋ねる。劉漢雲は北平にいる時に安王と大奥様に世話になっており、それ以来北平に来るたびに顔を見せていたのだ。だが今では大奥様は病で劉漢雲の顔がわからなくなっている。清代では劉漢雲が仕官だったと聞き、新演目は当時の宮廷を題材にしていると細蕊が教えを乞う。

商細蕊を探しに来た程鳳台。大奥様に券を届けに行ったと聞いて安王を訪ねると、ちょうど細蕊が義父を見送っていた。劉漢雲が来ていたとしって、鳳台に妙案が浮かぶ。もはや武器の件を解決するには劉漢雲と直接会うしか方法がない。ついこの前までは手段がなかったが、今なら何とかなる。曹師団長に鳳台が恩を売る。

劉漢雲が観劇にやってきた。細蕊が準備した2階の個室へ向かう。舞台裏では不安を隠せない小周子に、失敗を恐れず自分のやり方で演じきれと励ます商座長。お前には才があるから四喜児の芸は忘れて、型にはまらず芸を売ったときの感覚でやれと檄を飛ばす。舞台袖から見守る商座長と座員たち。あの子の芸は素晴らしすぎると范漣は絶賛する。その半面、この1か月で才能が開花して雲喜班に返したら、水雲楼の強敵になると心配する。そんな心配をよそに、商座長だけは、自分が見込んだだけあると満足気だ。

舞台裏に戻った小周子が演技の出来を商座長に尋ねる。数年後には周先生だと褒め、自分以外に小周子とは呼ばせないと断りを入れる。ついに商座長の出番になり、すべては商細蕊にかかっていると鳳台が期待を寄せる。

第24話 しがらみ

程鳳台の計らいにより、曹貴修は水雲楼の劇楼で劉漢雲との交渉の機会を得る。曹貴修は劉漢雲の信用を得るために、あるものを手土産として用意していた。一方、商細蕊が男役を演じる新演目は、同業者の妨害に遭いつつも成功を収めるが、事件は終演後に起こる。小周子は乗り込んできた四喜児に連れ戻されそうになり抵抗するが…。

舞台で演じる男役の商座長が新鮮にみえる。杜洛城がいる限り商細蕊はさらに多くの名作を演じることになるだろう。しかし、しばらくすると一部の客が難癖をつけ始める。姜登宝が手下をよこし、新作を台無しにしようとしていたのだ。いつもなら程鳳台が叩き出すところだが、曹司令官が来るのを知っている鳳台は、出る幕ではないと落ち着き払ってる。演奏者に目配せした商座長は歌い続け、舞台から引きずり降ろそうとする輩の鼻先に絶妙な間で剣を向ける。肝を冷やした輩は退散する。曹師団長の兵が突入し、警備に当たる。鳳台は曹師団長に目で合図し、劉委員が2階にいると知らせる。

曹師団長が劉漢雲を訪ねる。曹師団長は、程鳳台の銃を返すよう単刀直入に申し出る。銃は外敵の戦いに備えるために使うと言うが、そのような若者を何人も見てきた、と劉委員。曹師団長は、孫副官に刀と箱を持って来させる。箱の蓋を開けると、ひどい悪臭に秘書が顔を背ける。箱の中の生首は日本軍の大尉・北原一郎のものだという。本人のものだという証拠はもうすぐ届くはずだと伝えると、劉委員は一緒に観劇しようと席を勧める。

商細蕊の演技を観ている范漣は、細蕊一人で京劇の全てををこなせると賞賛する。子供の頃は男役を学んでいた細蕊が女役になったのは、ふざけて女役を練習して喉を壊したからだった。武人役を学んでいた義父・商菊貞は棍棒をもって細蕊を追い回したそうだ。商細蕊の男役は義父譲りの一座伝統の演技だが、女役はどの流派ともいえない。しかし耳障りが良くて味があるから女役で人気が出た。やはりこの世界では才能がないと一生歌えない。それを聞いた鳳台は、商座長に頼んで芝居の心得を書いてもらえば、新たな名役者を生むかもしれないと思いつく。

観劇中の劉委員に知らせが入る。報告書には日本軍の分隊が匪賊に全滅させられたとある。分隊長の名前は北原一郎だ。確証を得た劉委員は曹師団長の手土産を受け取るよう秘書に指示する。曹師団長が愛国者なのは分かったが、曹司令官の立場が分からない。父も愛国者であってほしいと願う曹師団長は、兵権を譲るよう父を説得してほしいと願い出る。劉委員は曹師団長の国と党に向けた忠誠心は本物だと見て、検討すると答える。

商細蕊の新作は成功に終わった。これで投票は1位になると安心する范漣は、投資も大成功だと喜ぶ。片や程鳳台は、劉漢雲と曹師団長の成り行きが気になる。

小周子の所に雲喜班の四喜児が乗り込んでくる。小周子を裏切者扱いする。汚い手を使って商細蕊が弟子をだまし取ったと、取っ組み合いが始まる。小周子のことを簡単には許さない四喜児。小周子は水雲楼に残りたいが、証文が四喜児の手元にあるかぎり一生雲喜班のものだ。商座長が証文の10倍の値を払うと提案する。10倍と聞いた四喜児は一瞬迷いを見せるが、いくら積まれても売らないと小周子を連れ出す。嫌がる小周子は柱に自ら頭をたたきつける。病院へ連れて行けば助かるが、四喜児は病院へはやらないと雲喜班へ連れ帰ってしまう。その時、遠くから「母上!」と叫ぶ声がする。

線香をささげる商細蕊。大奥様は何の痛みも苦しみもなく眠るように逝った。安貝勒が状況を知らせる。あの日はかすかに芝居の声が聞こえたが、中でも高い歌声の後、大奥様の部屋から「陛下」「珍妃様」と呼ぶ声が聞こえ、見に行くと死んでいたという。そこへ劉漢雲が駆けつける。大奥様から受けた恩を忘れたことがない劉委員は、こんな形で再会することを残念がる。今や劉漢雲は国民党の委員となったが、安貝勒は時代から取り残され、爵位も継げずにいると心のうちを明かす。あんな形で追われ、陛下に至っては敵の仲間になり情けないと漏らす。時代は変わり満州族も漢族も同じ中華民国の民になったのだから、共に国を守ろうと劉委員が言葉をかける。

昨夜の「潜龍記」を褒める劉漢雲。国の危機には誰しも責任と義務を負うものだが、若者にはそれが分からないので芝居を通して意識を変えるよう細蕊に託す。南京で初めて商細蕊と会った時、細蕊の節回しの至る箇所に寧九郎の趣を感じたが、2人とも志がある点も似ている。寧九郎は肝が小さく真面目な性格なので、芝居に少し手直しするしかできなかったが、細蕊に会ってから革新的な芝居「鉄冠図」を始めた。斉王は感動で喉を詰まらせ、陛下の前で上演した時は、皇帝の汚名をすすぐと誓う段で、陛下が涙を流したそうだ。それほどの名作なのに寧九郎の引退後は上演していないと聞き、劉漢雲は残念がる。

程鳳台と会った細蕊は、劉漢雲がずっと「鉄冠図」のことを惜しみ、寧先生について質問ばかりしたと聞かせる。劉漢雲が寧九郎に会いたいのと同じように、商細蕊の思いも同じだった。その思いを知った程鳳台はある提案をする。劉漢雲の宴を名目に、寧先生に出演を依頼してみるというのだ。早速準備に取り掛かろとすると、四喜児が医者を追い返したと知らせが入る。あの傷では命が危ないと細蕊は走っていく。

中に入れてもらえなかった細蕊は、夜になると壁を乗り越えて忍び込む。小周子は満足に水も与えられず放置されていた。小周子は商座長のおかげで舞台に立てたが、四喜児から一層憎まれるようになっていた。役者・周香蕓はここで死ぬかもしれないが、その前に商座長に一目会えて悔いはないとこぼす。細蕊は、技を全部教えてやると鼓舞するが、小周子の意識は遠くなる。

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